zenioのゲーム記録

自分用ゲームプレイ日記

【ネタバレ感想】Red Dead Redemption 2

 

 ネタバレなしのレビューはこちらにて。

以下、ネタバレだらけです。

 

 

 

【全体を通じて】

アーサー・モーガンの物語が本編として8割、ジョン・マーストンの物語がエピローグとして2割だが、雰囲気が全然別物で一粒で二度おいしい。

アーサー編はどんどん事態が悪化していってアーサー自身も死に向かっていることがプレイヤーに明示され、明るかったギャング団の雰囲気も殺伐としていく一方なので、かなり精神的につらい。前作はジョンが妻子の奪還に向かって少しずつ前進しながら、仲間も増え…という前向きな話だったが、今回はひたすら後ろ向きの話でしんどかった。

 一方でエピローグのジョン編はビーチャーズホープの牧場を購入して家を建てるまでの話が非常にコミカルで明るい。チャールズがいい奴過ぎて泣ける。演出も本編とは明らかに趣向を変えて、コメディ映画のようなカット割りが使われているのが印象的だった。重すぎる本編の余韻は残しつつ後に引きずらせない配慮が素晴らしい。

 

しかしながら前作も含めて考えると、最終的には悲しい話だ。

アーサーはギャングの世界を抜け出せなかった。アーサー自身はギャングの世界は自分の生きる場所ではないと思っていたが、元カノに一緒に逃げようと言われても断らざるを得ないほど、この世界に囚われていた。代わりに自分の命と引き換えに、マーストン一家を抜け出させることに成功した。

ジョンは一度は抜け出した。しかし自分が積んだ業からは逃れられず、再び暴力と復讐の連鎖の世界に引きずり込まれて死んだ。

彼らの命と引き換えに、ジャック・マーストンだけがこの世界から抜け出した。というのに、ジャックは引退したエドガー・ロスを探し出してこれを射殺し、暴力と復讐の連鎖の中に戻ってしまったという…。ジャックがロスを射殺した後ロスの遺体に背を向け立ち去る場面で「RED DEAD REDEMPTION」のロゴが挿入される絵はゲーム史上屈指の美しいシーンなのだが、これは取り返しのつかない失敗の物語なのだ。そしてRDR2はその取り返しのつかない失敗の深さを更に深めるための作品だった。

 

f:id:opportunist:20181120122909p:plainここのSEも最高

 

死と暴力を描く作品、という点で考えたとき、キャラの死に様も良かった。オープニングを除くと最初に死ぬのはショーンだが、そこまでそれなりに台詞も出番もあり個性も確立されていたキャラなのに、一瞬で死んだ。自分が死ぬという事を意識する暇もなく頭を撃ち抜かれて死んだ。ホゼアには一瞬の死の覚悟をする余地があったが、やはりあっけなく死んだ。レニーもショーンと同じように死んだ。

凡百のシナリオで描かれるような、致命傷を負った人間の長々とした口上はRDR2では描かれない。みんな唐突に路傍の虫けらのように、死の一瞬前まで自分が死ぬなんて想像もせずに死んでいく。長々とした口上は、言ってみれば自分が死ぬということに納得して死んでいくための儀式であって、そんな機会さえ与えられず死ぬからこそ、死は理不尽であって受け入れがたい。

一方でそれと真逆の描かれ方をされているのがアーサーで、結核を宣告されてからエピローグに入るまで延々と、納得して死ぬために命をかけて戦い続ける。

 

【アーサー・モーガン

前作の超人気キャラジョンさんの後任として重い期待を背負って登場したキャラだが、死ぬほどナイスガイだった。良かった。ゲーム序盤から中盤にかけてはプレイヤーの操作キャラとして個性薄めの印象だったが、ゲーム後半で結核に冒され、死を意識した瞬間から自分の足で歩き出し、一気に魅力的になった。

・アーサーの日誌には日記だけではなく、見たもの、行った場所、あった人のスケッチが描かれる。ギャングの戦闘員なのに趣味がスケッチという落差がそれだけでもギャップ萌え要素ではあるのだが、またこのスケッチが没入感を大きく高めている。

例えばブレイスウェイト荘園の並木は見事なロケーションで、プレイヤーに強い印象を残すシーンなのだが、アーサーの日誌にもその眺めがスケッチとして残される。ユーザーの主観とアーサーというキャラクターの主観が繋がるこの工夫は見事だった。

f:id:opportunist:20181116091111p:plain ブレイスウェイト荘園のスケッチ

 

またアーサーのスケッチは、本人の感情の動きとダイレクトにリンクしていない、どこか冷静な観察者のような視点で描かれているのも面白い。元カノのメアリーのスケッチや、頭をぶち抜かれたショーンの死体、ただただムカつく相手だったエメット・グレンジャーのスケッチなどが、どれも無法者アーサー・モーガンとしてではなく、スケッチャーとしての視点から淡々と見たままに描き残されていく。

  f:id:opportunist:20181116091112p:plain エメット・グレンジャーのスケッチ

 

人間はどこかで社会的な役割から離れた自分だけの場所を必要とするものだと思うが、アーサーにとっては日誌の中のスケッチを描くことがそうであったのではないかと思う。それくらい無法者としてのアーサーのイメージととこのスケッチを残した人間のイメージは乖離している。もし人生の岐路がどこかで違えば、アーサーにもタフでマッチョな画学生という人生もあり得たのではないか…と思うと胸が熱くなる。

 

元カノのメアリーとの話も良かった。本編序盤から中盤にかけてはダッチの忠実な手足としての側面しか見えてこない中で、別れた元カノに何故か呼び出されてはいいように使われるところが実に人間臭く感じた。バレンタインで一度、サン・ドニで一度呼び出されるのだが、特にサン・ドニのイベントが死ぬほど良かった。厩舎の前で掃除人に「どけ」と言われて「女を待ってるんだ、これ以上怒らせると殺すぞ」と明らかにいつもと違う調子でイキるアーサーさんとか、一緒にショーを見ていてメアリーの肩に手を回そうとするものの、視線で牽制されてすごすごと手を引っ込めるアーサーさんとか、「一緒に逃げよう」と言われて、仲間を見捨てられない、とそれを断るアーサーさんとか、尊さしかなかった。 メアリーもアーサーを都合よく使っているだけの嫌な女に思えたが、エピローグでアーサーの墓前で涙を拭っている様子が描かれており救われた気がした。

 

結核に感染した後、退役軍人のハーミッシュと友情をはぐくむ話や、「雨の到来」と仲良くなっていく話、未亡人のシャーロットに生き抜くために手を差し伸べる話も良かった。特に「雨の到来」に対しては「あの男は結構好きなんだ」とか「昔の俺ならただの弱い男としか思わなかっただろう。今は思慮深く強い男だと分かる」というコメントを残していたり、アーサーの成長が垣間見える描写が多数あって泣けた。結核にかかる以前のアーサーなら「誰かを人間として好きになる」ということはほぼなかっただろうと思う。それ以前のアーサーの価値観の基準はダッチであり、ギャング団であり、その組織との関係性の中で敵と味方という基準で人を見る傾向にあった。弟のような存在だったジョンにさえ、一時期ギャング団から距離を置いていた、という理由からわだかまりを持っていたほどだ。

「雨の到来」との会話の中では、たぶん他の場面では一切触れられないアーサーの死んだ妻子についての話も出てきて、アーサーが「雨の到来」に対して心を開いていたことも窺える。一緒にいられなかったばかりに妻子を無法者に殺されてしまった話は、クライマックスのダッチに対する「あんたにすべてを捧げてきたんだ」というセリフに、より一層の重みを与えていて良い。

 

【ジョン・マーストン】

前作の人間的安定感とお人よし感=余裕が感じられない、若いジョンの姿が描かれていて良かった。

何より熱いのが、あの前作で描かれたジョンを作り上げた精神的な父親とも言える存在だったのが実はアーサーだった、というのが最後半になって分かるところ。メアリーがアーサーに返した指輪をアビゲイルに贈るシーンとかもう泣ける要素しかないじゃないですか。物語序盤ではジョンに対してアーサーも距離を置いていたのに、後半のたった一度だけ交わされる「兄弟」呼びとかもう最高。ここの構成は本当に見事で、前作の主人公の扱いはシナリオ上なかなか難しいところなのだが、ジョンを十分に活かしたうえでアーサーを魅力的にしている。

 

アビゲイル・マーストン】

顔の造作はともかくとして、どちらかと言うとプレイヤーにとっては鬱陶しい存在。なぜならプレイヤーは困っている人を暴力で助けたいし銃撃戦がしたいしセイディと賞金首を狩りに行きたいしマイカを殺しに行きたいジョンさんの気持ちが良く分かるからだ。しかし圧倒的に正しい存在でもある。本来ジョンはゲデスの牧場でも奪われた馬車は見捨てるべきだったし、敵の牧場に乗り込むべきでもなかったし、マイカを殺しに行くべきでもなかった。結局はこれらの行動が前作の悲劇に繋がっているからだ。

ジョンは暴力で誰かから何かを奪う立場にいたので、自分が奪われる立場に立つ恐怖には耐えられないだろう。生涯暴力を手放すことができない。アビゲイルも奪う立場、奪われる立場両方を知っていたと思うが、そのうえでブレ無く暴力の放棄を主張できるのは本当に強い。ある意味作中で最も強く正しい人物であって、その正しさはプレイヤーにさえ刺さる。故に可愛くない。こういう人物をプレイヤーのパートナーに置くのがR★のシナリオの凄さだと思う。

 

【ダッチ・ファン・デル・リンデ】

最も難解なキャラ。正直まだよくダッチのことは理解できない。

ダッチの本質は王になりたい男なのだと思う。無政府主義や義賊と言った理想は、そこに付随して後天的に生まれたものだ。

作中、何度も何度も「次はどうする?」という問いがダッチに対して投げかけられる。ダッチとギャング団が置かれた状況は非常に困難で、次もくそもない、今この瞬間を切り抜けられるかどうかも分からない瀬戸際ばかりである。そしてあらゆる決断は裏目裏目に出て、ますますメンバーの不信感や不満が高まっていく。この状況は普通のリーダーなら折れる。「自分で考えろ」と言いたくなる状況だが、ダッチはこの言葉を決して口にしない。それは自分だけが決めること、という信念は決して揺らがない。それは、「自分がリーダーだ」というアイデンティティこそがダッチの本質だからだと思う。

一方でダッチは揺らぐ。アーサー曰く「無駄な殺しは固く戒めていた」はずが、ブラックウォーターでは女を殺し、グアーマでは老婆を殺す。インディアンたちを焚きつけて騒ぎを起こさせ、その騒動に紛れて逃げようなどという現実味のないプランのために平気で多くの人間を死地に追いやり、その過程でついに危機に陥ったアーサーさえ見捨てようとする。

ダッチは王になりたかったので、自分を王と崇める人間の期待に応えるべく今のキャラクターを作り上げたのだと考えると辻褄が合う。ギャング団が行き詰まっていく中で、彼の掲げた理想は頓挫しつつある。結果としてその理想に共鳴していたジョンやアーサー、チャールズの心は離れていき、自分の暴力に方向性を与えてくれる存在を求めているビルやマイカの求めるリーダー像を演じようとしているのだ。

ただ、物語の一番最後でマイカを撃ったことは、あの時点でのマイカとの関係性も含めてよく分からない。

 

【マイカ・ベル】

本作の裏主人公ともいえるキャラ。自分を拾ってくれたダッチに対して恩義を感じていることは確かなようだし、ストロベリーの牢獄から救ってくれたアーサーに対してもきっちりと恩義は感じていたようだし、逆手ホルスターまでプレゼントしてくれる。

イカが裏切り者なのかどうか、というのは事実かどうかは良く分からない。裏切っていたとすれば1.最初からスパイだった 2.ジョンの脱獄前後から裏切っていたというケースが考えられるが、どちらもこじつけようと思えばこじつけられるし、どこか不自然な感じもする。マイカの裏切りを証言しているのはジム・ミルトンだけだし、それ以外には状況証拠しかない。

ただ裏切っていたにせよ、そうでないにせよ、マイカ自身のキャラクターは凶暴な部分や気のいい部分も同様に備えた普通の人間だったという感想しかない。

 

エドガー・ロス】

エドガー・ロスがピンカートン出身だったことが前作で触れられていた記憶はないが、かなり重要な情報である。ピンカートン探偵社は実在の組織で、FBIの前身となったことも確かなのだが、同時に資本家の走狗としてスト破りなどの労働運動に対する弾圧に加担していた組織で、およそ法の守護者とは呼べない存在だった。

ロスは前作では最大の悪役で憎まれ役だったが、同時にアメリカの正義を象徴する人間でもあった。ビルやハビア、ダッチと言った犯罪者を処理するために、ジョンの妻子を人質に取って共倒れを狙うという、目的達成のために手段を選ばないながらも、その目的はアメリカの近代化であり、正義の執行者であり、それがエドガー・ロスの執念の源泉だと思っていたのだが…。

今作では実際出番が少なすぎて良く分からない。ピンカートンの負の部分を背負わせるためにジム・ミルトンが登場したのかもしれない。実際、ミルトンの存在は良く分からないもので、別にミルトンの役回りはロスがやってもいいはずである。この時点で既に若くもないことだし。ロスがミルトンのことをどう思っていたのかも分からないし、案外精神的には距離を置いていたのかもしれない。

 

【ハビア・エスクエラ】

 陽気で仲間思いのメキシコ人というペルソナを剥がしてみれば虚無しか見えない闇深キャラではないかという印象もあるが、良く分からない。

表面的には極めて安定しており、仲間思いで腕も立ち、拷問されても口を割らない豪胆さも兼ね備えたナイスガイである。キャンプではいつもギターを弾いて歌を歌っている印象しかない。アーサーと二人で釣りに行くミニイベントでは、ダッチに対する不信感が高まっている現状を「皆ダッチのことを考えすぎなんだ」と極めて俯瞰的でまともな意見を述べていた。

しかしながら、その姿勢はダッチが明らかにおかしくなって、無関係の人を殺し、仲間を簡単に見捨てるようになってもも全く揺るがない。では一体何をもってハビアはダッチに対する「忠誠」を誓っていたのか? 前作でもどこか掴みどころのないキャラクターだったが、今作でも終盤の緊迫した状況の中で全く軸が見えてこない不気味な印象を残すキャラだった。ひょっとすると前作のハビアと繋げようとしてキャラクター造形を失敗しただけなのかもしれない。

 

 二週目クリア後にまた追記するかもしれません。