zenioのゲーム記録

自分用ゲームプレイ日記

【レビュー】Oxygen Not Included

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 *前置きが長いですがゲームのレビューです

 

地球はいつか滅ぶ。

天体の衝突か、破局噴火か、ゾンビ化ウイルスの蔓延か分からないが、いつか人類が地表に住めなくなる時がやってくる。

 

そうなる前に人類は宇宙に進出して植民するか、地底に巨大シェルターを作って種を存続できるようにしないといけないが、今のところ、閉鎖空間で人間が持続的に生活できるだけの技術がない。これはバイオスフィア実験などからも明らかになっている。

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なぜそれが難しいのか? 端的に言えば閉鎖系においてはエントロピーが増大するからである。隔離空間は光や熱の出入りはあるので、完全な閉鎖系ではないが、起こっていることは同じである。例えば保存食があって、それを食べる。食べると人間の体内で消化されて、糞になって出てくる。糞を肥料として野菜を育てるのに使ったとしても、100%同じ量のカロリーが返ってくるわけではない。また野菜を育てるためには水と光が必要になる。水にもまた限りがあるので、最終的に人間から尿として排出された水分を水に還元せねばならないが、では尿から水分を分離して残ったものをどうするか?このように、有用だった資源が利用されるたびに一部が使い道のないゴミに変化して、有用な資源は目減りしていくのである。

 

また光も作るために電気が要る。電気を作るために使った資源をどう取り返すのか? 仮に閉鎖系というルールを無視して、外部から地熱から電気を取り出せるとしよう。発電、消費の際に発生した熱はどこに捨てるのか? 熱が溜まり続けてシェルターが温暖化するのではないか? 発電機が壊れたらどうする? 修理した際に使えなくなった部品はどこに捨てる?新しい穴を掘る?では掘って出た土はどこに捨てる?そもそも呼吸によって二酸化炭素になってしまった酸素はどう補充する?ここでもまた有用だった資源が使用されるたびに使い道のないゴミに変化し、シェルターの中に溜まっていく。

 

このように、閉鎖系に近い環境で生態系を成立させるというのは、至難の業なのである。前置きが超長くなったが、それを体験できるのがこのOxygen Not Includedというゲームで、ジャンルとしてはリアルタイム制の2D拠点構築サバイバルゲームになる。

同系統のコロニーづくり、街づくりゲームは数多いが、閉鎖空間での資源の循環とエントロピー増大への対応をシビアに求められる部分が類似ゲームとの一線を画す部分で、操作自体はそれほど忙しくなく、じっくり考えながらプレイすることができる。

 

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現実よりはかなり甘い調整で(でないとゲームにならないが)地下なのに穴を掘れるし、支援物資は届くしで、上達すれば生態系が永続する地下コロニーを作ることも可能なのだが、その過程で行きあたる様々な問題がリアルで面白い。

 

 

本ゲームの特色はリアル寄りなゲームシステムで、化学的な現象が細かく再現されるのが面白いポイントでもあり、難しいポイントでもある。

 

「Oxygen Not Included(酸素がない)」というタイトルの通り、酸素の確保が重要な目標のひとつとなる。キャラクターの活動には酸素が必要だが、消費された酸素は二酸化炭素となり、マップ内に蓄積されるが、二酸化炭素は酸素より重いのでマップの下の方に溜まる。(現実であれば、比重の差はわずかなので二酸化炭素はこれほど極端に沈殿しないが、ゲーム的にはこっちの方が面白い)なので、この二酸化炭素をうまく処理しながら、酸素の供給を行い、コロニーを維持しなければならない。

  

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他にも「熱」の扱いが非常に細かい。コロニーを維持拡張していくうえで取り入れる発電機や熱水などの熱源から熱が徐々に周囲に伝わり、コロニーが温暖化していく中で非常に重要な食糧源である植物が育たなくなったり、機械類がオーバーヒートを起こして機能しなくなるので、熱をコントロールしなければならない。

 

例えば建築用のタイル一つとっても素材(金属、岩など)によって熱伝導率や比熱が一つ一つ設定されており、熱を遮る性能の高い素材を使ってコロニーを温暖化から守ったり、反対にCPUの水冷のように、熱伝導率の高いパイプに水を通して熱を外部に逃がすなど、様々な工夫を凝らして熱をコントロールする必要がある。

 

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火成岩製のタイルのスペック

 

またゲーム内ではあらゆる資源が有限だが、いくつかの「間欠泉」からは無限に液体や気体などが供給される。しかしこれも前述の「熱」の問題でうまく利用するのが難しい。例えば間欠泉は95度の水を無限に供給し続けるが、このままコロニーに取り込むとあっという間にコロニー全体が温暖化して食糧生産に支障をきたすことになるので、これをうまく処理しない限り活用することはできない。

 

なので、例えばボイラー室を作って熱水を蒸気に換えて発電し、その電力によって液体クーラーを稼働させるとか、寒冷バイオームにパイプを通して冷やしてからコロニーに取り込むとか、いろいろ工夫しなければならない。このボイラー室の作成一つにしても、機械の配置、配管、素材選定など、化学エンジンの挙動をしっかり理解したうえで設計しなければいずれは熱によるオーバーヒートなどで、停止してしまう。寒冷バイオームにパイプを通すにしても、0度を下回るとパイプが凍結して破損してしまうし、いちいち何をするにしても難しい。

 

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水素発電機を利用するための単純なユニット例

また、やけに充実した攻略サイトがあって、これを見ているだけでもこのゲームの異常な奥の深さが窺い知れる。

 

 

oni-jp.playing.wiki

 

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