zenioのゲーム記録

自分用ゲームプレイ日記

【レビュー】Fallout4

世界を滅ぼした核戦争から200年後のアメリカを舞台に、ミュータントやモンスターが跋扈するアメリカで生きる人々の世界を描いたオープンワールドRPGFallout」シリーズのナンバリング4作目。

 

2015年に発売された少し古いゲームだが、発売当時に200時間ほどプレイしたときは寄り道しすぎてゲームクリアする前に飽きてしまった。

Fallout shelter onlineのプレイを機に改めて最初からプレイして、ようやく5年越しにクリアしたので記事に残しておく。

 

youtu.be

 

筆者はPS3でFallout3が本シリーズとの出会いだった。同社のTESシリーズも未経験で、初めてのベセスダ製RPGだったわけだが、異常なまでの自由度と没入感あふれる世界の作り込み、レベルの高いシナリオと「V.A.T.S」と呼ばれる斬新なバトルシステム、あらゆる面でかつてない衝撃を受けたゲームだった。残念ながらゲーム後半でフリーズが頻発するようになって断念したので未クリアのままだが。その後Fallout: New Vegasもプレイして、本作のプレイに至る。

 

シリーズ上の本作の特徴としては、シューターとしての要素が強化され、PRG寄りだったゲーム性が大きく変化したことが大きい。また、居住地に建物を建てられるシステムが導入され、街づくりシム的な遊び方もできるという点も大きな変化だった。主人公のperkやステータスによる会話の分岐の自由度が減ったこと、主人公にボイスがあったり、既婚子持ちだったりと、強めのキャラ設定をつけられていることも本作の特徴だが、この辺りにはシリーズの醍醐味を損なうとして批判の声も多かった。

 

個人的には批判されている点には賛同しなくもないが、本作の衝撃的なシナリオ展開は主人公のキャラ設定あってのことでもあり、これはこれでいいのではないかと思っている。ゲームの細やかな部分での圧倒的な自由度、という意味では前作に劣っているが、メインシナリオの展開にかかわる部分ではプレイヤーの判断と行動によって大きく世界の運命が分岐する。

 

以下、ネタバレに触れた感想。

 

ゲーム全体を通じての感想

 初回プレイ時はインスティチュートに到着する前にやめてしまって、Fallout shelter onlineをプレイしているときに「ファーザー=ショーン」という事実を知ってしまって後悔した。ダンスが人造人間というのも先に知ってしまった。発売当時にクリアしておけばよかった…

 それはさておき、Falloutシリーズのテーマというのは、これまで核戦争で崩壊した世界における秩序の在り方を描いたものだったと思う。本作でもBOSとインスティチュート、そしてレールロードという三つの組織が、それぞれの理念に従って理想の社会を実現するための争いを繰り広げている。本作ではその権力争いというテーマに、「人造人間」という一石が投じられている。 このテーマも悪いチョイスではないが、Falloutというゲームで人造人間に人間としての権利を認めるか、みたいなテーマを求めているプレイヤーはあまりいなかったと思うので、この辺りも4はちょっと違う、みたいな捉え方をされた原因の一つではなかったかと思う。

  居留地で建物をクラフトして街シミュレーションを楽しむ要素は、正直相当攻めたなと思った。Falloutというゲームを成立させる上では特に必要ない要素であるにも関わらず、ゲーム開発の手間を膨大にするような要素だったからだ。だが、3でも物資を集めてため込むようなスカベンジャープレイを楽しんでいたプレイヤーは多いと思う。自分もメガトンの拠点に物資をため込んだりして基地づくりを楽しんでいたので、この居留地クラフトの要素はプレイヤーのニーズにかなりマッチしていたと思う。Fallout4は発売当時からそれなりに批判も多いゲームだったが、このように新しいことを挑戦的な無難に焼き直しでゲームを作らない姿勢は称賛に価すると思う。

 

人造人間について

 これが現実世界での奴隷のメタファーであるという観点はおいておいて、人造人間には人間と同じように自立した人格が存在するのか、そして人造人間は人類にとって脅威なのか、ということだが、両方ともYESであると思う。ニック・バレンタインやパラディン・ダンスとの交流の中で、人造人間がただの機械でなく一個の自立した人格であるということが描かれている。この点で言えば、人造人間はただの機械であって利用すべき/排除すべきというBOSとインスティチュートの理念にはその時点でキズがあり、レールロードの主張が最も正しい。

 だが、人造人間は人類にとって脅威であることも間違いない。以前デトロイトビカムヒューマンのレビューでも書いたが、適者生存の原則に従えば、人造人間は設備と資源さえあれば繁殖が非常に容易である上に、放射線にも強く、コーサーのように個体としての性能も人間を圧倒的に凌駕している。人造人間は種の保存の上で人類に対して優位に立っており、人造人間が人造人間を生産することが可能になった時点で、いずれ人類にとって代わることは明白である。この点においてはBOSの理念は正しく、インスティチュートやレールロードのやっていることは人類滅亡への時計の針を進めているに等しい。

BOSについて

 あのダサカッコいいパワーアーマーとセットでFalloutを象徴する組織といってもいいBOSだが、今回は巨大飛行船基地という更なるまさに「飛び道具」を加えてますます隙がなくなった。リーダーのエルダー・マクソンも親しみが持てる感じのキャラではないが有能で強力なリーダーシップを発揮しており、全般的に隙がないがそのせいで面白みもない。パラディン・ダンスの存在がそこに面白みを与えているわけだが…。

 組織としての理念は極めて真っ当だと思う。テクノロジーを保護し、人類の存続を脅かすアボミネーションを駆逐しようという考え方には筋が通っており、そのための手段も妥当で、それなりに人道主義に配慮しつつも必要性があれば苛烈な手段も厭わない、というバランスのとれたもの。ノリとしては体育会系で、理系ヒョロガリのインスとはこの点でも対を成している。

 何より人造人間であることが明らかになったダンスに対して即座に討伐指令を出すという、このマクソンのブレなさが素晴らしい。

レールロードについて

 きわめて現代的な価値観を持った組織で、真っ当な主張をしている組織にもかかわらず、おそらくFallout4のプレイヤーから最も支持されない組織になっているという、シナリオの妙とも言える存在だと思う。そもそも人類が危機に瀕しており日々の生活もままならないのに、人造人間の権利とか気にしてられっかよ、という現実的な判断がこのような結果を生んでいるのだと思う(あと、人造人間を救ってそれからどうするのだというビジョンを示していない)が、だがそう考えてレールロードを滅ぼしたプレイヤーもおそらく大半がパラディン・ダンスを救い、DLCのファー・ハーバーでは人造人間のコミュニティを守る決断を下しているだろう。プレイヤー自身の矛盾や欺瞞を暴き出すという、メタ的に極めてアグレッシブで可愛げのない組織であり、そういうところがプレイヤーから忌避されていると思う。

 また、一見弱小勢力だが、世論操作や情報隠蔽の面ではレールロードの存在がインスティチュートにとって大きな障害になっており、BOSによる侵攻を呼び込んだのも間接的にはレールロードの諜報戦の影響があったと考えられるので、そういう意味でも立ち位置として面白い。

インスティチュートについて

 マッドサイエンティスト集団という他ない。実にマッドで愚かな集団である。彼らの最も愚かな点は、人造人間は機械であって完全にコントロール可能で人類の維持発展に寄与すると考えている点で、このすべてが致命的に間違っているうえに、その間違いに気づく気配すらない。連邦に住む住人を人間と考えておらず、平気で殺して入れ替えたり人体実験に供するなど、倫理的な面でも三つの組織の中で飛び抜けて邪悪で、擁護のしようがない。この組織のトップに生き別れの息子であるショーンを配置するというのがFallout4のシナリオの最大の妙であって、肉親の情と己の信条と善性の中でプレイヤーを大いに惑わせてくれる。

 個人的にはインスティチュートを支持した。なぜかというと、人造人間が人類になり替わって世界の支配者となっても構わないし、むしろそうなるべきだとさえ思っているからだ。この観点で言えば、レールロードにもBOSにも、新しい人造人間を生み出す力や意思がなく、インスティチュートを支持せざるを得ない。

 確率的に、この広い宇宙に存在する知的生命体は地球の人類だけである可能性がある。そして、真に貴重なものは人類の「遺伝子」よりも「知性」であって、この担い手として脆弱性だらけの人間よりも人造人間の方が優れていると思うからだ。いつか地球は人類が住めなくなるので、我々は宇宙に活動範囲を広げて行かざるを得ないが、それに適しているのは人間よりも人造人間である。

ミニッツメンについて

 人間の良心と素朴な生きる力を体現したような組織だと思うが、主人公がいなければ勝手に消滅していたような組織であり、どこまで行っても自分たちの足で立つことができない残念な存在である。ミニッツメンエンドはめんどくさくて見ていないのだが多分そうだ。ガービーはいい奴だけどめんどくせえよ。

DLC「ファーハーバー」について

 本編でレールロードが不人気になることを最初から見通していたようなシナリオで、普通に善人プレイしているとプレイヤーは人造人間のコミュニティーの存続に力を貸してやることになる。本編ではレールロードを掃討しているのに、ここでは人造人間を助けるのか?という皮肉な問いかけを感じる。

 チャイルドオブアトムが完全にイカレたカルト集団で、こいつらは滅べばいいと思うので、どの勢力の肩を持つかという問題に関してはあまり葛藤がない。テクタスを殺して穏当な人造人間の替え玉と入れ替えるか、Dimaの罪を告発して償わせる代わりにアカディアを救うかの二択になるが、入れ替えの方がエグい。これに加担することによって、プレイヤーはインスティチュートの所業を非難する根拠さえ失うからだ。

 Dimaに罪を償わせたとしても、チャイルドオブアトムとファーハーバーの緊張関係は解決しないので、結局プレイヤーとしてはショップを維持するためにチャイルドオブアトムを放置して将来に禍根を残すか、アトムを奇麗に核ミサイルでぶっ飛ばすかの選択を迫られる。(ぶっ飛ばした)

 クエストギバーであるナカノ一家の影が極めて薄いシナリオだが、カスミはFallout4の女性陣の中ではそれなりに美人な方なので居留地に住ませて商人にしたかった。

DLC「ヌカワールド」について

 ファーハーバーのシナリオがプレイヤーの人造人間へのスタンスをメタ的に皮肉ったものとするなら、ヌカワールドは善人プレイをメタ的に皮肉ったものではないかと想像する。ゲーム的に面白かったらレイダーの肩だって持つんでしょ?という。

  ゲームとして面白かったのでレイダーの肩を持ったし、三勢力の中でもっとも邪悪かつ有害なディザイプルズを滅した。

  DLCとしてはファーハーバーの方が良かったと思う。